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2025

    「あたりまえに、新しさ。」 人々の生活を豊かに

    「あたりまえに、新しさ。」 人々の生活を豊かに

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    モリトは、1908年(明治41)に創業し、1935年(昭和10)に設立。明治、大正、昭和、平成、令和と5つの元号をまたいで発展し続ける老舗だ。洋服に使うハトメ(布や紙などに空けた穴が破れない様、補強するリング状の金具)やホック、マジックテープ®などの服飾の付属品(パーツ)の販売事業を中心とするメーカー的商社だ。現在では、学校用品、スポーツ、鉄道、自動車業界など、様々な分野へと裾野を広げている。いわゆるB to B中心の製造業の会社による最新マーケットへの挑戦について、一坪隆紀(いちつぼ・たかき)代表取締役社長に伺った。

    先人の言葉のおかげで“強固”な財務内容を維持

    創業が1908年(明治41)と、日本の企業の中でも有数の歴史を誇っておられます。歴史ある企業が、その伝統を受け継ぎながら、最新マーケットの中で発展を続けていくのは、難しい面もあったのではないでしょうか。その秘訣があれば、教えてください。

    私たちは、ホックやボタンなど、日用品の様々なパーツを作り続けて、皆さまの生活を支えている企業です。「衣・食・住」という言葉をよく使いますが、「食」以外の部分と考えていただいてもいいでしょう。つまり、生活空間の中で必要とされるものばかりで、決してなくならないもの。それでも、その必要とされている現状に甘んじることなく、時代の移り変わりとともに変化するニーズに真摯に向き合い、柔軟に対応しながら、本質的な価値にこだわり続けてきたことこそが、私たちが長く事業を継続できている理由ではないでしょうか。

    また、先人が「何かあった時にキャッシュはしっかりと持っておかないといけない」という考え方を大事にしていました。そのため財務内容的には、とても強固です。そういう意味で、とりたててお金の心配をせずに、事業に専念することができました。

    私たちは約80年間、B to B事業のみを展開してきました。「つなぐ、留める、飾る」という商品をお客さまに届ける中で、品質・価格・納期といった要素が最も大事であると考え、それを追求し続けてきました。当たり前ですが、モリトと商売したら安心という歴史を紡いできたことも、とても重要なことだと考えています。 さらに付け加えるなら、グローバル対応の促進というところで、時代の変化に対応してきたということでしょうか。世界各国に拠点を持ち、供給体制を整えていることや、機械の使用方法の指導やメンテナンス対応などのアフターフォローを手厚く行っているため、川上から川下までしっかりとケアしていくということができているという点も、弊社が長続きしている理由だと思っています。

    「分社化」は、モリトの明治維新

    2022年(令和4)に分社化されたと伺っています。117年という長い歴史の中で、「分社化」はどのような意味を持つとお考えでしょうか。

    おかげさまで弊社は110年以上続いているわけですが、昨年、同じように創業100年を超える企業の倒産が多くありました。老舗企業は、良い意味でも悪い意味でも伝統に固執して、変化を望まないことが多いです。自分たちは変わらなくてもよい。誰かがやってくれるだろうと考えてしまう。それが、ある意味「企業の衰退の始まり」で、その事実に気づかないものなんです。「衰退」は、急にじゃなくて、ゆっくりと進んでいきますから。

    「分社化」は、我々にとって意識改革でした。それぞれの会社が、競争力を持ちつつ、それぞれの分野で努力していく。そうすると、今まで見えなかったものが見えてくるようになると思います。弊社でも、各事業ごとの課題が明確になったことに加え、営業1人1人の意識改革が進んだことで、目に見えて利益率が向上しました。

    「分社化はモリトの明治維新なんだ」という想いを社内に伝えていました。分社化後の経営は今のところ順調で、未来の経営者を育てていくといった展望も見えてきました。たとえ個別の会社が失敗したとしても、グループで支えていくことができます。

    社員にも積極的な改革派と保守的な考えのものがいます。人数が多いとそうなるのが当然で、古い体質に変革をもたらすのは難しいことなのだと感じています。皆に同じ方向を向いてもらうための努力は、私1人ではできませんが、今のところは順調に発展できていると思っています。

    「見えない付加価値や機能」で生活空間を豊かに

    記事内画像

    貴社のロゴ「MORITO」の「M」の字には、特別な意味が込められていると伺いました。

    ロゴのモリトの「M」の真ん中が下がっているのは、何か新しいものに触れた時の衝撃や感動、驚きといった「動悸」を表しています。「O」は書体の下を少しカットすることで、日の出のイメージを表現しています。全体を黒で統一しているのも、何にも染まらない強さを表しています。(社員が)よく考えて作ってくれたと思っています。

    また貴社のタグライン(企業の価値をわかりやすく表現したフレーズ)は「あたりまえに、新しさ。」というものです。この言葉に込められた意味を教えて下さい。

    例えば、新幹線の座席の前にある、簡単な荷物を入れるネット。あれは弊社の製品なんです。伸縮性の網なので、何も入っていない時は、前の座席の背面にピタッとくっついている。特殊な編み方をしているので、乗客の皆さんが行き来しても邪魔にならないようになっています。伸縮性があるがゆえのネットで、利用する方にストレスがかかりません。弊社が追求しているのは、こうした見えない付加価値、機能です。実際に、新幹線の乗客の皆さんはほとんど気づいていないかもしれない。そういった無意識の中に新しさ、利便性を追求していくことで、人々の生活空間を豊かなものにしたい。それが「あたりまえに、新しさ。」というタグラインの意味です。

    「B to C」の商品開発で“やりがい”や“ワクワク感”を!

    事業を展開させていく上での基本方針として「サステナビリティ」を掲げていらっしゃいます。社長ご自身は「サステナビリティ」について、どのようにお考えでしょうか。また近年では、直接消費者にお届けする商品開発も手がけられているそうですが、その試みについても教えて下さい。

    昨今、よく言われる「SDGs」という言葉にしても同様ですが、単なる流行で終わるのではなく、その中で生き延びる「本物」である必要があると思います。そこを間違えてはいけない。弊社はアパレルをメインにしておりますので、例えばリサイクル事業として、海洋プラスチックごみの原因のひとつである廃漁網を資源として再利用するという取り組みを行っています。 弊社は長くB to Bとしてやってきましたが、近年ではB to Cにも挑戦しています。自分たちで企画し、デザインした製品がヒットすれば、やりがいとか楽しみとかワクワク感とか、そうしたものが得られるだろうというのが最初の発想でした。「to B」で展開している既存のOEMビジネスの経験を活かし「to C」についてもスムーズに行うことができますし、「to C」で培ったデザイン性を「to B」のOEMビジネスに活かすこともできることから、「to B」も「to C」も、どちらもあれば相乗効果が出ると思っています。あくまで「to B」がメインの会社ではありますが、今後はバランスを見ながら「to C」にも取り組んでいこうと考えています。

    最後に海外での事業展開についての、ビジョンを教えていただけますでしょうか。

    まず一つは地産地消ということです。一つの国で材料を調達し、その国でモノをつくり、さらに販売もしていく。これを理想として掲げているのですが、実現が難しいのが現状です。たとえば中国では、材料はすべて調達できるものの、人件費が高騰しているため、製造は離れざるを得ないでしょう。とはいっても中国の膨大な人口は魅力ですから、今後も販売はやっていくつもりです。弊社にはベトナム工場もありますが、材料調達がベトナムだけでは賄えないうえ、消費も少ないため地産地消はできていません。いずれにせよ地産地消の理想のため、製造・調達・販売をもっと強化していかないとなりません。

    「分社化」によって、グループは10年前に比べて大きく変わりました。それぞれの会社が責任と目標を持ち、成長していくことが理想です。その結果、グループ全体の発展につながると考えています。また、各社が切磋琢磨しながら挑戦を続けることで生まれる相乗効果こそが、これからの成長の鍵となると思います。

    #モリト#トップインタビュー#パーツ#サステナビリティ

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