
【理屈だけで 人は、動かせない】フジッコ社長が語るリーダー論とは(前編)
ビジョナリー編集部 2025/04/02
4/4(金)
2025年
ビジョナリー編集部 2025/04/01
ヨロズは、1948年(昭和23)に萬自動車工業株式会社として設立され、1990年(平成2)に株式会社ヨロズへと商号を変更。自動車の足回り部品として最も重要とされるサスペンションメンバーやサスペンションアーム部品を主体とした専門メーカーとして、国の内外を問わず多くの自動車メーカーから厚い信頼を得ている。 世界の自動車業界を取り巻く環境や、ヨロズの今後のビジョンについて、平中社長の忌憚なきご意見を伺った。
私は1982年、⽇産自動車に⼊社しました。それで丸30年、⽇産自動車で働いてからヨロズに参りまして、2021年に社⻑を仰せつかって、現在に⾄るという経歴です。 ご存知かもしれませんが、特に⽇本においては、⾃動⾞業界というのは⾮常に裾野が広い業界です。今現在でも、全就業⼈⼝の10人に1人は⾃動⾞業界といっても過⾔ではないぐらいかもしれません。
戦後の日本では「鉄は国家なり」といわれ、⾼度成⻑期を⽀えてきました。一方で、⾃動⾞業界も鉄や電気と並んで、やっぱり雇⽤を含めて⽇本経済を⽀えてきたという⾃負はあります。 ガソリン⾞とかディーゼル⾞が主流の時代では、欧⽶、そして日本の⾃動⾞メーカーが世界を引っ張ってきました。⾼度成⻑期以降の日本では、トヨタ、⽇産、ホンダを中⼼とした主要メーカーが、世界と戦ってきたわけです。私自身も、そういう時代を経験してきました。 例えば、⽇本が誇るハイパフォーマンスカー、⽇産GT-R(過去のスカイラインGT-R)が間もなく⽣産を終えます。時速300キロで走行できる車ですが、その中でも会話ができる車を実現したのは、弊社のサスペンション部品です。
特に弊社の部品は、いわゆる縁の下の力持ちと私は表現していますが、走っている車の姿からは見えない、車体の真下からではないと見えない部品です。この部品たちが、路面や車が走る道路の凹凸や、衝撃を吸収する役割を果たして、時速300キロを超えるものすごいスーパーカーでも、揺れたりしないで会話を楽しめ、安全・安心のドライビングを可能にする。こうした高度な機能を我々の部品は求められているし、そのために技術の粋を尽くして、製造に邁進しています。私自身は技術屋ではないのですが、こうした弊社の技術を、大変誇らしく思っています。
とにかく実験を繰り返し繰り返しやっていって、GT-Rにふさわしい性能といったものが出るまでやり尽くしました。妥協は⼀切、しませんでした。当時、はるかに高性能だと言われていたヨーロッパ⾞に勝つには、少しの妥協も許されない状況でした。
そういったスポーツカーを、作り上げることができたのは、ひとえに⼈と⼈との輪なのではないかと、私は思っています。今までないものを作り上げるのは、本当に「失敗して当たり前」で、やはりそこの中でも「できるまで諦めない」という気持ちが大切になります。1⼈でやることに限界があるから、いかに皆で団結できるかが大切になる。当時の現場の温度感、熱量というのは、⾃動⾞メーカーと部品メーカーが⼀体となって、同じ夢、同じ⽬標に向かって⼀緒になれた証です。素晴らしい成果の中の1つだと私は思います。
日本の自動車メーカーが、世界をリードしてきた時代から一転、ここ4、5年の自動車市場に目を転じると、今おっしゃったEVをはじめとした電動化の時代で、やはり中国メーカーの台頭が、非常に顕著となってきています。
中国で作られたEVが世界中に輸出されている。⽇本、アメリカ、ヨーロッパの⾃動⾞メーカーが、引っ張ってきた時代から、中国という“新興国”の⾃動⾞産業、そこが電動化の時代にリーダーとなりつつあります。⾃動⾞業界の中の景色が大きく変貌する中で、いま一度、⾃動⾞業界が脚光を浴びている時代だとも言える。そうした意味でも感慨深いものがあります。
社長に就任した2021年、環境問題への取り組みは積極的にやっていかねばならないという思いがスタートでした。誰かがやってくれるからいいと捉えたらその先にはいかない。損得で見てもいかない。経済活動の前に、地球上に生まれた人間として、企業活動をさせていただいている1人として、生活している地球の問題に真正面から取り組まなくてはいけないと思っています。
また、愛知県名古屋市に元々工場があったのですが、その周りに住宅地ができていって取り囲まれてしまうということがありました。工場は騒音や振動が出る大型機械も使うのですが、安眠妨害になってはいけない。立地によってはトラックの出入りができないから近くに倉庫を借りなくてはいけないなどの制限もあります。企業として厳しい競争を勝ち抜いていかないといけない中で制約が多いのは厳しいため、新工場を建てることにしました。
新工場を建てるからには、どういう工場にしていくのかを必死に考えました。 設備を新しくし、競争力のあるものづくりをしなければならない、環境問題にもしっかり取り組まなければならない。既存の工場をカーボンニュートラルにするのは大変ですが、新工場であれば取り組みやすい。お金はかかるけれど、誰もやっていない自動車部品初のカーボンニュートラル工場にして、いろいろな自動車メーカーが関心を持ってくれたらビジネスで返ってくるはずだと信念を持って取り組みました。
また、やはりその街にしっかりと受け入れられないといけない。輪之内は人口1万人に満たない町で、そんなに大きな会社はありません。ただモノを作ればよいのではなく、この街に貢献して一緒に発展していける企業でありたい。例えばこの街中で電気自動車が走って街おこしに繋がったらいいなと。 それをヨロズで働く従業員も粋に感じてもらって、また株式会社ですから投資家さんにも投資してもらえるのではないか、これが中期経営計画でも申している、全てのステークホルダーから選ばれる会社になるという考えです。 お客様から、取引先から、地域社会から、投資家から、そして従業員からも選んでもらえる企業になる。そういう思いを持って取り組んでいます。
経済をはじめとする状況が厳しい中、従業員は、1人ひとりがワクワクするような強い思いを持ち、世の中の動きに敏感に対応できる思考力・行動力そして感性を磨いています。また、これまでの常識にとらわれずに、新たな価値を創り出すべく、それぞれの立場で日々の業務に全力で取り組んでおります。
お話ししてきたように電気自動車の時代にはいって、自動車の各部品には従来とは比べ物にならない高いレベルが求められるようになっています。ラッキーなことに、弊社の社員たちはエンジニアも含めて、ここ5年、6年、7年と技術研究を積み重ねてきた実績がありますので、むしろ求められるレベルが高くなればなるほど、弊社の強みが発揮できると感じています。
たとえば近年では、ENEOSスーパー耐久シリーズ 2024 Empowered by BRIDGESTONE 第2戦「富士SUPER TEC 24時間レース」で走行する車両(MAZDA SPIRIT RACING MAZDA3 Bio concept)のために、マツダさんと共同で開発した「超軽量ロアアーム」という製品があります。この車両は、廃食油由来の「水素化植物油」である次世代のバイオディーゼル燃料で走行する耐久車両で、とにかく車体の軽さと高い剛性が技術的に求められます。そうした中、弊社では成形が難しいロアアームという部品に薄板の超ハイテン材料を使って、さらに精緻なプレス成形技術で製品化に成功したものです。ハイテン材の採用により、従来の厚さ3.2mmを2mmに削減し、形状を工夫することで剛性を維持しました。素晴らしい材料です。 このハイテン材のように、新しい素材や部品が次々と生まれています。我々はそれらを使いこなせる成形技術をしっかりと身につけていく。それがこの厳しい時代を生き延びていくための、大きな方策だと思っています。
「安心・安全」で「抜群の品質と乗り心地の良さ」、その上で「コスト競争力」のある「脱炭素に貢献する技術力を結集した」素晴らしいサスペンション部品を各自動車メーカーに供給し続け、電動化時代に確固たる存在感を示していく覚悟です。こうした取り組みを通して社会に貢献し、皆さまの期待に応えられるよう、今後も精一杯取り組んでいくつもりです。