
日本の紅茶文化が変わる?体験型「午後の紅茶」キッチンカーができるまで
ビジョナリー編集部 2025/04/01
4/8(火)
2025年
ビジョナリー編集部 2025/04/07
サントリーの「BOSS」は、1992年に缶コーヒー界の新たな存在として登場した。
「BOSS」の開発にあたっては、自動販売機の存在が大きかったという。
当時、サントリーの自販機は業界2位。しかし、認知度は他メーカーに比べると遥かに下回っていた。
そこで同社は、「缶コーヒーでブランドを作ろう」と戦略を立てた。 缶コーヒーは自販機の中で最も売上構成が高い。そこで強いブランドを持つことが、自販機ビジネスを左右すると考えたのだ。
新ブランドの開発が始動。まず、ターゲットを「身体を使って働く人」の一点に絞った。缶コーヒーのヘビーユーザーである。まず、彼らから缶コーヒーの飲用実態や心象を徹底的に深堀りするため、アンケートを実施した。 トラックの運転手には助手席でインタビュー、タクシー運転手には休憩所で試飲調査を行うといった具合である。
そこで分かったことは、彼らは会社を出ると一人であり、ある意味自由に自身の裁量で仕事ができる、ということだ。
それは同時に、孤独でもある。
そんな彼らを励ましてくれる、また頼りになる存在を生み出したいと考えた。
そうして生まれたのが、缶コーヒー「BOSS」である。
「働く人の理想の自分像」 「缶コーヒーのボスになる」
という2つの意味を込め「BOSS」というネーミングに決定した。
加えて、相棒として人格化しやすいよう、おじさんのロゴマークを開発。
このように、ターゲットの気持ちを深堀りすることで、BOSSブランドは誕生したのである。
2017年、コーヒー飲料界に激震が走る。
ペットボトルコーヒー「クラフトボス」の誕生だ。
サントリーはなぜ、ペットボトル容器のコーヒーを発売したのか。
「クラフトボス」が誕生する2017年前後は、コンビニコーヒーやサードウェーブコーヒーが流行する一方、缶コーヒーの売上は横ばいが続いていた。 若い世代が、缶コーヒーを飲まなくなってきたのである。
そこで目を付けたのが、当時急速な増加傾向にあったITワーカーだ。 新しい働き方である「プログラマー」「システムエンジニア」といった人たちをターゲットとし、ここでも深堀りをした。
そこで、3つの気づきを得た。
缶コーヒーのヘビーユーザーは、仕事に区切りをつけ、休憩中に飲料を飲むことが多い。一方で、ITワーカーは休憩のような区切りがなく、作業をしながらゆっくり飲料を飲むというスタイルを持っていた。 そのスタイルに、容量の少ない缶コーヒーはマッチしていなかったのである。
彼らはコーヒー自体は好きで、以前は仕事中に飲んでいたが、缶コーヒーのイメージを聞くと
「長期保存ができる缶詰めのイメージ」 「中味が見えなくてデザインも似ている」
と、あまりポジティブな印象が得られなかった。
一方、缶コーヒーを飲まない人たちも、当時急速に広がっていたコンビニコーヒーは好んで飲むという。
「爽快な気持ちになる」 「氷が少し溶けたころに、すーっと飲むと気持ちがいい」
こうした声から、“100円で飲める本格コーヒー”というタテマエの裏に、“爽快な気持ちになる”というホンネの価値があることを発見した。
缶コーヒーを飲まない世代にお気に入りのモノは何かと聞いたところ
「おじいさんが使っていた万年筆」 「友人の革職人が作ってくれたベルト」
といった声があがった。
そのほかにも「あえて、手書きで日記をつけている」という人もいた。 ITという職業とは対極にあるこだわりである。仕事中は膨大なデジタル情報を扱っているため、その反動として「人」や「手」のぬくもりを感じる「アナログなもの」を好むのではないかと考えた。
このような3つの気づきから生まれたのが、「クラフトボス」だ。
仕事をしながらデスクの傍らでゆっくり飲めるよう容量を増やし、爽快な気持ちになれるよう、淹れたてのようなクリアな味わいに仕立て、さらに「人」や「手」のぬくもりを感じるように、ガラス瓶のようなデザインのペットボトルを採用した。
結果、「クラフトボス」は発売後すぐに爆発的なヒットを記録し、コーヒー飲料に新たな市場を創造することに成功したのである。
発売以来、好調をキープしている「クラフトボス」だが、今ではコーヒーだけでなく、「TEA」や「抹茶オレ」などコーヒー以外にも裾野を広げている。
その背景には、働く人の多様化がある。
「BOSS」は「働く人の相棒」というコンセプトのもと、挑戦を続けてきた。「働く人」とはつまり生活者であり、「相棒」とはその生活者との関係性である。生活者の働き方やメンタリティの変化に応じて、相棒としての関係性も変化していかなければならない。
時代時代の環境や価値観に合わせ、相棒として寄り添うべく、コーヒーだけにこだわらず変化してきた結果が、現在のラインアップになっているのだ。
今後も「働く人の相棒」を軸に、BOSSの挑戦は続く。